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29日夜、東京・西新宿東京都庁前で、若年女性を支援する一般社団法人Colaboの支持者らによるデモ活動が行われた。取材班が目視したところ、小雨の降る中、約100名前後が集結。交替でマイクを握り、リレー演説などを行った。

現場には国内・海外のメディアに加えて、同団体に批判的な配信者と見られる人たちも集まり、一触即発の状態に。警察官が割って入ることもしばしばだった。

活動は大きなトラブルなく終了したが、約1時間の演説・活動全体を見て、若干の違和感も拭えない。記者が気になった点を以下にまとめよう。


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■代表の仁藤氏は現れず

新宿区役所敷地を使用したバスカフェ活動について事業の委託者である東京都から中止を求められたため、22日にも行われた都庁前での抗議活動では、Colabo代表の仁藤夢乃氏が参加。

また、活動のシンボル「バスカフェ」として使用されているピンク色のバスも登場した。抗議活動および「代表の参加」と「バスの乗り入れ」については、東京都が団体宛に遺憾の意を表する文書がSNS上に拡散。

それもあってか、29日の抗議活動では主催を「Colaboのバスカフェ開催を求める市民有志の会」とし、仁藤氏は姿を見せなかった。ただ、自らの主張をより多くの人に届け、味方を増やすためには、代表自ら先頭に立ったほうがよかったのではないか。

それができないなら「有志の会」などとカモフラージュするのではなく、街宣活動自体を行わないほうがよかったのではないだろうか。

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■「撮影禁止」で騒動に

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29日の抗議活動では、バスカフェの開催を求めるプラカードだけでなく、多くの参加者が「撮影禁止」という札を掲げていた。Sirabee取材班は、主催者の許可を得て、顔がはっきり映らないという条件で撮影。写真を掲載して速報記事を配信している。

現場に集まったColaboの活動に批判的と見られる人たちは、抗議活動の様子を主に動画で撮影・配信。主催者側は何度も撮影に抗議し、もみ合いになるシーンも散見された。

しかし、未成年が利用するバスカフェなら撮影禁止も理解できるが、衆目を集めてアピールするための街宣活動で撮影禁止を訴えるのは、そもそも道理に合わないのではないだろうか。


■街宣・政治活動に道路使用許可は不要

29日の抗議活動では、SNS上で「道路使用許可申請が行われていなかったのではないか」といった投稿も見られる。取材班が新宿警察署の警備担当者に確認したところ、「デモ行進でない街宣活動・政治活動なので道路使用許可申請は不要」とのこと。

Colabo支援者の道路使用に法的な問題はない。しかし一方で、著作権法第40条1項は、「公開して行われた政治上の演説」について、「いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」と定めている。

リレー演説に立った中には、現職の都議会議員も含まれていた。街宣・政治活動だとすれば、配信者たちと激しくもみ合いになるほど撮影行為を止めさせようとするのは、適切な対応だったのだろうか。

なお、リレー演説の中では「配信者たちが撮影した支援者の顔をAVに合成して映像をつくっている」と主張する女性も。これはさすがに荒唐無稽な話のようで、反対派グループが失笑する姿も見られた。

■警察官は中立

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雨が降る中にも関わらず、現場には複数の警察官が駆けつけ、トラブルが起こらないようにColabo支援者・反対派の両方を制止していた。

警察は私設のボディーガードではないため、違法行為がない限り「Colabo支援者だけを守る」ということはなく、事件に至らないよう間に入っているように見えた。

ところが、警察官支援者におそらく上記のような意味で「警察はあなたたちを守るのではない」と発言したところ、支援者サイドヒートアップマイクを握る人からは「警察官が男性だからでしょうか」といった発言まで飛び出した。

男性に限らず女性警察官であっても、同じ対応をしたのではないだろうか。

東京都の担当部署から遺憾の意を表され、溝が深まっているように見えるColaboだが、同じく都知事が所轄する東京都公安委員会や警視庁とも対立を深めているような構図が見受けられる。

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■強く感じさせられる「分断」

短いながら街宣活動を取材し覚えた違和感は、総じて「分断と対立」を煽るような言動に対してだったのではないか、と思われる。

昨今、多様性(ダイバーシティ)と同じ文脈でよく使われる包摂(インクルージョン)という考え方の反対で、「警察官が味方しないのは男性だから」「反対派による撮影は許さない」といったような。

これは、反対派の火に油を注ぐだけでなく、社会の大半を占める中間派を遠ざけてしまうのではないかと危惧せざるを得ない。


■真に被害者のために

代表の仁藤氏がSNSなどでしばしば発信する「キモい」「キモいおじさん」といった攻撃的・侮蔑的なメッセージは、分断を煽る代表的な一例だ。

Sirabee編集部が今年1月に実施した調査では、「キモいおじさん・キモいおばさんはどちらもヘイトスピーチだと思う」との回答が6割を超えている。なお、29日の街頭活動では、この言葉が連呼される場面はあまり見られなかった。

キモいおじさん・キモいおばさん

分断・対立を乗り越えて、若年被害女性のためになる活動とは何なのか。Colabo関係者や支援者だけでなく、自治体や社会全体にもあらためて問われている。

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(取材・文/Sirabee 編集部・タカハシマコト

【調査概要】 方法:インターネットリサーチ 調査期間:2023年1月18日1月21日
対象:全国10代~60代男女1,000名(有効回答数)

「Colabo支援」都庁前デモに仁藤夢乃氏は現れず 激化する分断と対立の行方