毎年多くの日本人ががんで命を落とすなか、「がん保険」はやはり加入しておくべきなのでしょうか。本記事では、金融業界25年のキャリアを持つFP田中和紀氏による著書『FPが教える!マネーリテラシーを高める教科書』(ごきげんビジネス出版)から、第3分野の保険の必要性について解説します。

第3分野の保険は必要か?

社会保険があっても医療保険は必要か?

「第3分野の保険」とは、医療保険などのことです。第1分野が生命保険で、第2分野が損害保険です。以前はこれらが主流だったのですが、外資系保険会社が第3分野に特化した保険を売り出し、浸透していきました。

人の生命や物の保険だけでなく、ケガや病気による入院費や手術費を補てんする保険に需要が高まりました。ただし、医療の分野では、公的な社会保険もある程度カバーしています。この社会保険を知らずして、医療保険に加入するのは過ちです。まずは公的な社会保険を勉強してから、加入を検討しましょう。

医療保険は、ケガや病気のときに入院費が支給されます。他にも、手術費用や通院費なども支給されるケースはあります。突然の病気やケガで働けなくなり無給となった場合に、経済的不安を取り除くことができるのです。

心強い保険ではありますが、社会保険でもカバーしているので、足りない部分を補う程度にしましょう。

公的な社会保険では、健康保険や国民健康保険の医療費は3割負担です。手術などの高額な医療費は、高額療養費制度がカバーしてくれます。入院費は保障対象ではありませんが、健康保険では傷病手当金が無給の間カバーしてくれます。よって、健康保険である会社員は、あまり必要としない保険かもしれません。

日本人の死因第1位は「がん」…がん保険は必要か?

次にがん保険です。これも医療保険の一種で、がんに特化した保険になります。

日本人の約25%はがんで亡くなるとのデータもあるくらい、がんになる確率は高いのです。しかも手術が高額になるケースや、入院が長引くケースもあります。よって、これらをカバーするがん保険は、加入者も多いようです。

ただし、先述したように、公的社会保険で十分と考えるのであれば、未加入でもよさそうです。近年では、入院が長引くケースは減りつつあります。国の施策(高齢化による病床不足解消のため)や、医療の進歩などが影響しているようです。

私は医療保険とがん保険ともに加入していましたが、がん保険は解約しました。医療保険は終身保険の特約についているため、継続していますが、入院などで医療保険のお世話になったことはありません。ただし自営業ですし、最低限の保証は安心感につながっています。

がん保険は付き合いで入ったこともあり、その後に解約しました。解約後にがんになると後悔してしまうため、解約には勇気もいります。よって、保険は入るときに、慎重に検討すべきでしょう。

医療保険やがん保険は、社会保険制度でカバーしている部分はあるのですが、持病のある方やがん家系である方、自営業者の方などは、検討も必要かと思われます。保険は不安を取り除き、安心した生活を実現できる制度ですが、保険料で経済的圧迫を受けるようでは、逆に生活が不安定になります。バランスを考え検討しましょう。

公的な保障が手厚い介護への備え

他には、介護保険もあります。介護状態になれば支給される保険で、現在は高齢化で介護を受ける人数も増え、需要は高まっています。しかし、こちらも公的な社会保険が手厚く保護しているのです。

私の両親は、ともに介護保険を受給しました。それぞれ「要介護1」「要介護2」になり、介護サービスを受けさせてもらいました。

最初は役所に連絡し、介護判定を行ってもらい、その後ケアマネージャーが派遣され、どのようなサービスを受けるのかなどを相談。ほぼ毎日、ヘルパーさんが食事や掃除などで、数時間来てもらえるようになりました。

他にも、リハビリ・入浴・訪問看護・訪問医療などもあり、在宅での暮らしをサポートしてくれています。デイサービスなどもあり、本人や家族の意思で選択もできます。利用となれば、迎えに来てもらい、施設で食事・入浴・娯楽・運動などのサービスを受けられるのです。

こういったサービスをほぼ毎日受けても、1割負担なので手出しは1~2万円程度です。ちなみに、私の親は障がい者認定も受けており、医療費は無料となっています。さらに進むと、ショートステイや施設への入居も検討しなければなりません。

自治体によっては、そのときの本人の年金や資産によって、サービスの金額に違いがあります。特養などの施設入居となれば、月に数万円以上の違いもあります。年金や資産が少なければ手出しも少なくなるため、調整して年金や資産を少なくするのはオススメです。

繰り下げ受給で年金が高かったり、相続で資産を集中させたりなどすると、よくないこともあるのです。

このように、介護の負担は社会保険でカバーできます。より手厚くしたい場合は、民間の介護保険も検討してみるとよいでしょう。

田中 和紀

ファイナンシャルプランナー

※本記事は『FPが教える!マネーリテラシーを高める教科書』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

(※写真はイメージです/PIXTA)