「お金の不安」を解消する第一歩は、固定費や変動費などを見直すことです。「医療保険」や「がん保険」の見直しも有効な手段のひとつです。本記事では、独自の節約術を編み出しゼロから5年で1,000万円の資産形成に成功した経験をもつYouTuber・FPの「ミニマリストゆみにゃん」氏の著書『オートで月5万円貯まる魔法の節約術』(KADOKAWA)から、一部抜粋してお伝えします。

がん保険も医療保険も多くの人には「不要」

がん治療はいくらかかるかご存知ですか? 1,000万円なのか? 100万円なのか?

厚生労働省研究事業「がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担の在り方に関する研究」によれば、がんになっても治療にかかる実質的な自己負担額の平均は年53万円程度だそうです。

その理由は、日本人が全員加入している健康保険に「高額療養費制度」という、どんなにお金がかかっても医療費を一定金額までにしてしまう制度があるからです。健康保険の詳細は次の通りです。

(1)自己負担の割合

まず、医療費の自己負担割合が限られています。原則として、75歳以上は1割(現役並みの収入がある高齢者は2〜3割負担)、70歳から74歳までは2割、70歳未満の者は3割、6歳未満は2割です。

(1)高額療養費制度

それに加え、1ヵ月あたりの自己負担額にも上限が設けられています。「高額療養費制度」では、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1ヶ月の上限額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超過分が払い戻されます。

会社員でもフリーランスでも専業主婦でも、健康保険に入っていますので、高額療養費制度の対象です。自己負担の上限額は年齢や所得によって異なりますが、69歳以下で平均的な年収の人ならば、どんなに医療費がかかっても月9万円程度の負担で済みます。

支払いは「限度額適用認定証」を作れば最初から割引後の支払いになりますし、マイナンバーカードを健康保険証に利用登録していれば限度額適用認定証の機能も内包されているので心配ありません。

(3)医療費控除

さらに、税制上も「所得控除」を受けられます。年10万円以上かかったお金は確定申告で控除され、所得税と住民税分が還付されます。平均年収の場合は、所得税20%、住民税10%で合計30%なので、40万円支払いした場合、9万円ほど返ってきます((40万円−10万円)×30%=9万円)。

入院すると、治療費以外に食費(入院時食事療養費)もかかります。1食当たり約460円、1日(3食)では約1,380円です。他にも個室または4床までの少人数の病室に入院した場合は「差額ベッド代」も1日数千円かかります。

入院中の食事代や通院のための交通費は医療費控除の対象ですが、差額ベッド代は対象外です。ただし、治療費と違いそこまで高額ではないことが多いため、保険に入る理由にはなりません。

また、会社員であれば有給休暇+傷病手当金+失業手当で収入はカバー可能です。なので、日本では過剰に医療費を心配する必要はないのです。

「先進医療」はいらない!? 衝撃のデータ

先進医療のために「がん保険」に入っている方も多いかもしれません。しかし、これも結論からいえば、不要です。なぜなら、先進医療とは「最先端の医療」ではなく、効果があるか検証中の医療であり、しかも、受けられる機会も極めて少ないからです。

たとえば、がんの先進医療のほとんどを占めているのが「粒子線治療」(「陽子線治療」「重粒子線治療」)です。しかし、粒子線治療の方が普通の放射線治療よりも優れているとする研究成果は、今のところ世界的に見てもあまり出ていません。

治療を受けられる機会も少なく、中央社会保険医療協議会「令和4年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」によると、2021年7月1日~2022年6月30日の1年間において粒子線治療を受けた患者は、全国で1,855人にすぎません(陽子線治療1,293人、重粒子線治療562人)。2023年11月1日現在の日本の総人口は約1億2,431万人なので、国民6万7,000人に1人です。

また、がんの部位や本人の状態によって受けられない場合も多いのです。筆者の父も直腸がんになりましたが、医者から粒子線治療は受けられないと断られました。胃や大腸など不規則に動く臓器では使えないとのことです。

このように、効果が検証されているわけでもなく、受ける機会も少なく、受けられる条件も限られている先進医療に備えるために、がん保険に加入することは、おすすめしません。

民間保険は、社員の給料や代理店への手数料、家賃、テレビCM代など多額の費用がかかります。特にCMは数十億かかりますから、CMを出しまくっている保険会社はかなり資金の余裕があるということです。

そもそも株式会社は株主のために存在しているので、あなたが払った保険料は、最終的には株主の利益になります。なので、お金持ちは保険に入るのではなく保険会社の株を買っている、という見解を示す方もいます。

もちろん、保険で得をする人がいるというのは事実です。しかし、保険は「不幸の宝くじ」と呼ばれています。理由は、保険の期待値が、宝くじの1等~7等のいずれかに当せんする期待値と同じ50%程度だからです。

すべての保険が不要だというわけではありません。扶養している家族がいる場合、万が一、自分が亡くなった場合に備え、必要最低限の掛け捨ての死亡保険(定期保険)に入っておくことは必要です。

しかし、保険料の平均総支払額は世帯で1,200万円というデータもあります。1,200万円で宝くじを買いますか? 保険で得したから入った方がいいと言う人は、「宝くじが当たったからみんな買った方がいいよ〜」と言っているのと同じです。

お金を払って「先進医療」の実験台にならなくていいのです。もしもの時のためには宝くじを買うのではなく、現金100〜300万円を貯めておきましょう。不幸の宝くじより、「安心の現金」です。

ミニマリストゆみにゃん

ファイナンシャルプランナー

YouTuber

(※写真はイメージです/PIXTA)