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 進化というと長い年月がかかるようなイメージがある。だがアメリカでは、ほんの25年のうちに急速に進化を遂げたカエルが発見されたそうだ。

 『Ecology and Evolution』(2024年3月12日付)に掲載された研究によると、カエルの進化をうながしたのは、人間が無害だと思って長年使用していた、道路にまかれる凍結防止剤の塩だという。

 ウッドフロックと呼ばれるそのカエルは道路にまかれる塩から身を守るため、わずか10世代のうちに塩に対する耐性を身につけたのだ。

【画像】 凍結防止剤として使用される塩

 北国に住んでいる人なら寒い冬、道路に白い粉のようなものが落ちているのを見たことがあるかもしれない。

  あれは道路が凍るのを防ぐためにまかれる凍結防止剤で、その主成分は塩化ナトリウムや塩化カルシウムなど、つまり塩でできている。

 アメリカでは、交通事故防止のためにこうした凍結防止剤が80年前から使われており、現在では1970年代に比べて4倍もの塩がまかれるようになった。

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道路にまかれた塩が他の生物たちに影響をおよぼしている

 人間にとっては害がないことされていることから長年使用されていたわけだが、他の生物にとってはどうなのだろう?

 塩が環境に与える影響についての研究は比較的少ない。

 だが、それが水辺に流れ込むと、そこに生息する生き物を殺したり、成長を妨げたり、カエル性転換を引き起こしたりと、さまざまな悪影響があるだろうことが明らかになりつつある。

 これについて、レンセラー工科大学のリック・レリア博士は、「両生類は湿地帯で生きますが、そうした環境は湖よりも水が少ないため、塩分濃度が高くなりがちだろうと思われます」と説明する。

 彼らの研究では、塩分濃度が一番高かったとある駐車場わきの湿地では、自然環境の100倍近くもの濃さだったという。

25年で塩耐性が進化したカエル

 ところが、そこで暮らすカエルたちは、わずか10世代(25年)のうちに普通のカエルにはない塩分耐性を進化させていたのだ。

 レリア博士らは、それぞれ違う場所からウッドフロッグ(アメリカアカガエル、カナダアカガエル)の卵を集め、そこから孵化したオタマジャクシがさまざまな塩分濃度にどれだけ耐えられるのか比べてみた。

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 その結果、もっとも塩分濃度の高い湿地で採取されたオタマジャクシは、ほかのオタマジャクシに比べて、塩分にさらされても長く生存できることが判明した。

 つまりは彼らが塩に対する耐性を進化させていたことが明らかになったのだ。

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塩耐性がついてもただの時間稼ぎでしかない

 とは言っても、塩分耐性カエルの防御力は、今以上に塩が濃くなっても生きていけるということでは必ずしもない。

 だがレリア博士によれば、カエルにとっても、ほかの生き物にとっても、時間稼ぎにはなるかもしれないという

両生類が高い塩分濃度に対応するため、あっという間に進化したという事実は、カエルのみならず、おそらくほかの生き物についても、絶滅を回避する時間があるだろうことを告げています(リック・レリア博士)

 そして幸いなことに、アメリカ国内の市や町は、もっと少ない量の塩で道路の凍結を防ぐ方法を学んでいるところだという。

 それは交通の安全を守り、予算の節約にもつながり、なおかつ環境だって守れる賢いやり方だ。

References:Rensselaer researcher finds that frog species | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo

 
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アメリカのカエルは道路の塩分で急速に進化が進んだことを発見